ワークシェアリングを分かりやすく!事例やデメリット(問題点)解説!filterワークシェアリングを分かりやすく!事例やデメリット(問題点)解説!

ワークシェアリングを分かりやすく!事例やデメリット(問題点)解説!

「最近、ワークシェアリングという言葉を聞き、興味があり導入を考えている。実際にどんな働き方なのか、具体的に分からないから、いろいろ知りたい。」こんな悩みを持つ方向けに、ワークシェアリングについてまとめています。

当記事では、ワークシェアリングの基本的な部分から、種類、メリット・デメリット、導入方法などを解説します。日本ではまだ馴染みがない働き方ですが、うまく活用することで生産性アップなどにも貢献してくれるため、興味ある方は参考にしてみてください。

ワークシェアリングとは?

ワークシェアリングとは、Work(仕事)をSharing(分配)するという意味になり、1人あたりの負担を減らそうという考え方です。ワークシェアリングをおこなうことで、ストレスや疲労などの軽減につながり、生産性アップにつながるといった効果があります。さらに、分散させることで雇用を生み出す効果もあるのが特徴です。

ワークシェアリング増加の背景

ワークシェアリング

海外では、昔からワークシェアリングの考え方が一般化されており、導入して成果を残しています。その動きは日本でも注目され始め、2002年頃には「ワークシェアリングに関する政労使合意書」というものが完成し、広まっていくことになります。この背景には、これまでの日本が抱えてきた「失業問題」「長時間労働問題」があります。この頃には「ブラック企業」という言葉が、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)で出始めたと言われているように、労働問題の深刻化が認知され始めた時代でした。これらの解決策の1つとして導入され始めたのが、ワークシェアリングです。

ワークシェアリングの種類

ワークシェアリングには、主に4つの種類があります。それぞれ、特徴が異なりますので解説していきます。

1.雇用維持型(中高年対策型)

中高年対策型は、定年以上の方を再雇用し、労働時間短縮によってコストをかけず経験豊富な人材の確保をすることができます。再雇用できる中高年にとっては、自身の経験を活して働ける場があることより、やりがいや年金以外の収入を確保することができます。短時間勤務でコストも通常よりはかからない上に、経験豊富な人材を確保できるので業務効率化や社員への教育にも効果があります。

2.雇用維持型(緊急対応型)

緊急対応型は、雇用を維持したまま業績悪化を乗り切ることができます。通常であれば、企業にとって人件費は大きなコストであり、業績悪化時にはリストラなどの対策をおこない回避しようとします。ですが、ワークシェアリングの場合は、雇用を維持したまま1人あたりの労働時間を減らすことで、人件費削減を狙います。さらに、業績悪化ともなれば社員への負担も大きくなりやすくなるため、そうした心身への負担を減少させる効果もあります。さらに、雇用した人材の流出対策にも効果的です。そして、雇用を維持することにより、急激な業績回復の場合でも対応することが可能です。

3.雇用創出型

雇用創出型は、既存社員の労働時間を短縮させることで「休職中の方」の雇用を創出することできます。様々な事情でフルタイムが難しい方でも、時短勤務であれば働ける可能性が高くなります。こうして既存社員に加えて時短勤務の方を雇用することは、短時間勤務しかできない休職者の失業対策にもつながります。さらに、優秀だけど時短勤務しかできない人材の確保もしやすくなるため、企業にとっては雇用創出をおこなえると同時に、人材確保にも効果的です。既存社員の業務負担が分散されることで軽減されるため、生産性アップにも期待できます。

4.多様就業型

多様就業形は、時短勤務・フレックスタイム制・テレワークなど多様性のある働き方を推進することで、様々な人材を確保することができます。特に、育児や介護などでフルタイム勤務が難しい方にとって、多様性のある働き方がある企業は魅力的です。企業は、これまで育児や介護などで、まともに働けなかった人材を確保することができます。その中には優秀な人材もいるかもしれません。働く側にとっても、仕事とプライベートの両立がしやすくなるため、ストレスを大きく抱えることなく仕事することができます。

ワークシェアリングのメリット

ワークシェアリングにはメリットがいくつかあるので、それぞれ解説していきます。

フォロー体制が確立できる

これまで1人でおこなっていた業務を、分散してチームとしておこなうことで、ミスが起こっても他の方がフォローできる体制が確立できます。ミスのみならず、他の方が何らかの事情で休んでしまうときも、その方のフォローをすることができます。本来なら1人でこなす業務のため、担当者が休んでしまうと業務が滞ってしまいますが、ワークシェアリングであればフォロー体制が整っているため進めることが可能です。

1人の負担が減らせる

1人の業務を複数人で分散しておこなうたため、1人あたりの心身的負担を軽減することができます。特に繁忙期に残業が重なってしまい、心身ともにヘトヘトになる場合もあります。そうなれば状況に耐えきれず、体調を崩してしまうなど人材が減ってしまう可能性もあります。社員への負担を少しでも緩和させるために業務を分散させることは、安心感や余裕が生まれて仕事もへのモチベーションも維持しやすくなります。

人材確保に期待できる

働きたいと思っていても育児や介護、定年後だからという理由で働く場がなかった方の雇用を生み出すことができます。中には優秀な能力を持っているため、企業にとっても人材を発掘できるチャンスになります。「時短勤務でもいいから少しでも働きたい」という方はいるため、人件費を抑えつつ確保することができます。特に、人材が不足気味な企業にとってワークシェアリングを有効活用することで、その効果を大きく実感できるでしょう。

生産性アップが期待できる

これまで挙げてきたメリットを総合的に含めて、社員や雇用された時短勤務の方どちらも生産性アップに期待できます。社員からすれば、これまでの業務を分担してもらうことで残業や勤務時間が減り、心身的な負担が軽減されモチベーション維持につながります。時短勤務の方は、多様性のある働き方で働けることで、これまで時間的な縛りでできなかった仕事とプライベートを両立できる体制が整います。こちらも心身的な負担や、モチベーションアップにつながり、結果的に企業の生産性アップに期待が持てます。

ワークシェアリングのデメリット

ワークシェアリングにはデメリットもいくつかありますので、それぞれ解説していきます。

給料や経験が減る

ワークシェアリングでは、複数人で1人の負担を減らす目的があるため、勤務時間が短縮されます。これは時短勤務として雇用された方は問題ありませんが、社員にとっては給料が減る可能性があります。特に、製造業の現場では残業代が給料に大きく反映されることもあるため、残業代目当ての方もいます。ですから、それ以上に勤務時間を減らすワークシェアリングに反対する社員が出るかもしれません。ただし、その場合は企業が副業を推奨したり、スキルアップできるような研修を実施するなど、代替案を用意することが大切です。

問題点を把握しづらくなる

1人でおこなっていた業務を分散することで、全体を把握できていた業務が把握しづらくなることもあります。例えば、自身であれば見逃さない問題でも、チーム内の誰かが見逃してしまう可能性があり、発見が遅れたり気づかないままという可能性も出てきます。ですから、チーム内での連携体制を強化しておく必要があります。ここで大切なのは「ワークシェアリングのせいだ」と思うのではなく「人が仕事をする以上、大なり小なりヒューマンエラーは出るもの」という考えです。社員はそれを意識しつつ、マニュアル作成などをおこない問題が起きづらい環境づくりをしましょう。

従業員増加によるコスト増加の可能性

雇用創出の意味合いもあるワークシェアリングでは、雇用することにより人材確保ができる一方で、雇用が多くなれば人件費がかさんでしまう可能性があります。個人の給料のみならず社会保険も考えなければいけません。人を雇うことはコスト増加につながるのは当然の結果ではありますが、社員などの時短勤務で減少するはずの人件費が、雇用する時短勤務者の数により増えてしまうこともあります。ですから、現状把握とワークシェアリングを導入する目的を明確することも大切です。

一時的な生産性ダウンの可能性

ワークシェアリングは、新たな取り組みとして導入することが多いため、導入後にはうまく連携などができずに生産性ダウンの可能性もあります。業務負担は減りますが、そのための環境づくりにおいて引き継ぎであったり、慣れない方が関わることで業務効率が下がる恐れがあります。ですから、そういった部分を事前に考慮しておき、どうすればスムーズに導入していけるかを考えておきましょう。「問題点を把握しづらくなる」の章でもお話したように、マニュアル作成や独自の研修などで人材が入れ替わっても、スムーズに業務がおこなえるようにする必要があります。

ワークシェアリング導入方法

ワークシェアリングが徐々に理解できてきたところで、実際にどのように導入すればいいのかを5のステップに分けて解説します。

1.現状把握と目標設定

まずはワークシェアリングを導入する目的を明確にしましょう。ワークシェアリングは「社員1人の業務を複数人で分散することで、それぞれの業務負担や残業を軽減する」ことができます。さらに「新たな業務によって雇用創出により人材確保」もできます。ですから現状で各部署の把握をしましょう。その上で「社員の業務負担を軽減して生産性アップにつなげたい」などの目標を明確にすることで、導入後に効果が出ているか把握しやすくなります。

2.不要な業務選定

現状把握をおこなったら、無駄を減らすために不要な業務がないか選定します。その業務をやめる、または別の方法で無駄を減らせないかを考えましょう。無駄な業務があることで導入後に、余計な負担を与えてしまう可能性があります。新たな制度だけでも初期段階では慣れるのに時間がかかりますので、無駄な業務があることで余計に時間のロスにつながってしまう可能性があります。

3.ワークシェアリングに適する業務選定

ワークシェアリングに適正のある業務を選定します。すべての業務に適している訳ではなく、複数人でおこなったほうが効率的な業務に導入しましょう。専門的な職種では、その人以外に任せることができないため導入しづらいですが、経験者を雇うことで導入することも可能になるでしょう。

4.必要な業務マニュアル作成

スムーズに引き継ぎや業務をおこなうにあたり、必ず作成しておくべきなのがマニュアルです。同じ業務を経験している方であっても、企業によってやり方が異なる場合があります。ですから、基本的な業務内容はもちろんのこと、独自のルールなどもしっかり記載して作成します。特に、初心者の方などを雇用する際には、初心者目線でマニュアル作成をしておく必要があります。

5.実施後の評価と進捗確認

導入後は当初立てた目標に、どれだけ近づいているのか進捗を確認しましょう。そして、業績に対して効果はどのくらいあるのか評価もしていきます。効果があれば、そのまま継続していけばいいですし、効果が薄ければ導入部署の見直しなどが必要になります。さらに社員にとっては時短勤務になったことにより、給料が減ってしまうことが最大のデメリットです。ですから、短時間勤務の中でも社員への評価なども、しっかりおこなっていくこともオススメします。

日本のワークシェアリング事例

実際に企業がワークシェアリング導入した事例を見てみましょう。

自動車産業

日本の自動車業界

2009年にリーマン・ショックの影響で世界的金融危機が続く中、日本の自動車業界においても、ワークシェアリングが実施されました。

マツダは、派遣労働者を1500人解雇したものの改善せず、さらに昼夜2交代制を日勤勤務のみにし、正社員1万人分の勤務時間を半分に減らしました。そして基本給20%減・時間外手当・休日手当なども減らしています。トヨタは、期間従業員を含む3万5000人を対象に、2~3月の11日にかけて国内12工場の操業を停止し、2日間を休業日として賃金20%を減らしました。さらに、米国においても6工場でワークシェアリングを導入しています。スズキは、2月に5つの工場を3~8日間稼働停止させ仕事を分け合う方針を示し、トラックで有名ないすゞでも、時短勤務や給与削減などを実施しました。

ワークシェアリングを有効活用しよう

ワークシェアリング

ワークシェアリングは、活用することで社員の心身的負担を軽減させ生産性アップにつながったり、雇用創出に一役買ってくれます。事例で挙げたように、不景気にも効果を発揮しやすい対策です。ただし、デメリットもあるため、よく理解した上で自社に必要なのかを検討してください。導入する際には、ご紹介した5つのステップを意識し、スムーズに導入して成果を出せるようにしましょう。当記事で、ワークシェアリングについて理解が深まり、導入の際に参考になれば幸いです。

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