個人事業主になるには開業届が必要?自営業との違いや税金など解説filter個人事業主になるには開業届が必要?自営業との違いや税金など解説

個人事業主になるには開業届が必要?自営業との違いや税金など解説

「個人事業主に興味があるけど、よく分からない。基本的なことから個人事業主になるにはどうすればいいのかなど、分かりやすく知りたい。」こんな悩みを持つ方向けに、個人事業主について、まとめてみました。

本記事では、個人事業主の基本的な部分から、メリット・デメリット、税金や給付金、法人成りなどについて解説しています。個人事業主について知っておいたほうがいい内容が分かりますので、ぜひ参考にしてみてください。

個人事業主とは?

個人事業主は「法人ではない個人が税務署に開業届を出して、独立して事業を継続・反復しておこなっている人」のことです。株式会社などの会社を持たず、基本的に1人で事業をおこなうことが多いです。中には家族や友人などに、給与を払って手伝ってもらっているケースもあります。個人で飲食店や雑貨店などを経営している方、士業の方で個人事務所を設立している方などにも個人事業主は多くいます。

個人事業主と自営業の違い

個人事業主と自営業は、厳密に言えば違いがあります。個人事業主は上記でも解説したとおり「法人ではない個人」になります。一方で自営業では、個人の方もいれば法人の方もいます。イメージしやすいのは「自営業者の中には個人事業主もいる」という認識です。「個人事業主=自営業」と思われがちですが、必ずしもそうではないことが分かります。どちらも自分で事業をおこなっている部分では変わらないものの、さらに言えば法人設立していれば税務処理が異なります。ですから、この部分だけでも混同しないようにしましょう。

個人事業主になるには開業届が必要?

個人事業主として本格的に開業する場合は「開業届」を、事業開始後1ヶ月以内に税務署に提出することが推奨されています。開業届は税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」と、都道府県税事務所に提出する「個人事業税の事業開始等申告書」があります。開業届は、出さなくても罰則はありません。ですが、後ほど解説する青色申告には必須ですし、賃貸契約や融資などでも提出を求められる場合があります。一般的には罰則がないため、税務署への開業届だけでの個人事業主は多いです。

個人事業主のメリット

個人事業主になると得られるメリットは様々あります。

1人で独立する人

個人事業主は手続きが簡潔で費用がかからない

個人事業主になる手続きは、すでに解説したとおり、法人設立よりも簡潔で開業に関しては費用もかかりません。法人(株式会社)であれば、開業して登記する費用が約25万円ほど必要になります。さらに、信用の元となる資本金や、社会保険への加入など個人事業主よりも費用が多くなります。「初めは個人で小さく事業をしたい」ということであれば、個人事業主から始めてみるのもいいでしょう。

会社員よりも収入が上がる可能性あり

個人事業主は頑張った分だけ全て収入に直結するため、会社員よりも収入が上がる可能性があります。日本の一般的な会社では、頑張りが全て給与に反映されることはありません。ですから、自身の力に対して全て収入に直結させたい方は、個人事業主として独立してみるといいでしょう。会社勤めでも例外はあります。外資系金融機関などでバリバリ活躍すれば、年収数千万円~数億円も稼ぐことは可能でしょう。しかし、そういった年収を得られるのは一部の限られた方であり、可能性として現実的ではありません。ですから稼ぐことが目的であれば、個人事業主として小さく始めて徐々に収入を大きくするという選択肢もあります。

時間に融通が効きやすい

個人事業主は、自身でスケジュールをコントロールしやすいです。仕事をするタイミングも、休憩するタイミングも基本的には自由に決められます。クライアントによっては、納期などがあるため完全に自由ではないにせよ、会社員よりは時間に融通が効きやすいです。自身でスケジュール管理ができるようになれば、それが性に合っている方はストレスが減る要因にもなるでしょう。多くの方が働いている時間や曜日に、調整して旅行することも可能になります。大型連休など料金が高くなる時期よりも安い金額で済みますし、人も少なめの状態で楽しむことができます。時間に自由が効かせたいというメリットから、個人事業主になる方も少なくありません。

定年退職がない

個人事業主は、定年退職がありません。会社員のように会社で決められた定年がないため、自身で引き際を決めることができます。好きな仕事をしている方は、一生その仕事をしたいと思うでしょう。個人事業主であれば、好きな仕事を一生続けることも現実的に可能です。ですが、どれだけ長期間働いても、個人事業主には退職金がありません。ただ、退職金代わりになる制度はあります。小規模企業共済やiDeCoです。

小規模企業共済は、掛金1,000円~7万円まで毎月積立可能で、全額所得控除になります。一括でも分割でも退職金を受け取れますが、20年以上積立しないと掛金を下回ることを理解しておきましょう。iDeCoも掛金が全額控除になるなど控除面で優れており、売買益などの利益が全額非課税です。ただし、60歳以上にならないと原則受給できず、運用成績で給付額が変動するなどのデメリットもあります。よく検討して活用してください。

職種によっては場所にとらわれない

場所にとらわれずに仕事ができる環境を作りやすいのは、プログラマやWEB制作などのIT関連の方です。カフェ・レンタルオフィス・自宅など、PCとインターネット環境があれば、基本的にどこでも仕事することが可能です。オンラインツールを活用すれば、クライアントとのやり取りもスムーズにおこなえますし、納品などもオンラインでやり取りできます。個人で活動しているYouTuberなんかも、個人事業主になります。YouTubeで広告収入を得られて生活できるようになれば、場所にとらわれることなく活動できます。

会社員なら節税効果や国民健康保険がお得になる

個人事業主は会社勤めしている会社員でも、手続きをおこなうことで可能です。そして、会社員ならではのメリットもあります。会社員の国民健康保険料は、会社で発生する給与(4月~6月)を元に計算されているため、個人事業主として収入を得ていても加算されません。通常、独立して個人事業主になれば、収入額に比例して国民健康保険が高くなります。つまり会社員として個人事業主(副業として)になることで、完全に独立して国民健康保険を支払うよりも、お得になります。

さらに、個人事業主であれば「損失計上」することができます。副業と言えども個人事業主なので、確定申告が必要になります。確定申告をする際に、本業の収入+副業の収入の合計に税金がかかります。個人事業主なら副業で赤字を出したときに、最大3年分を控除額として繰り越すことが可能です。つまり、本業の収入から副業の赤字分を損失計上して繰り越せるため、税金が還付される可能性もあります。税金が還付されるということは「払いすぎた税金が戻ってくる=節税効果」になるでしょう。

個人事業主のデメリット

様々なメリットはありますが、デメリットもありますので解説します。

個人事業主のデメリット

確定申告は自分でおこなう必要がある

会社員であれば、会社が給与から税金を事前に天引きして、年末調整をおこなってくれます。ですが、それを自身でおこなう必要があります。毎年2月中旬~3月中旬の約1ヶ月間申告期間があります。確定申告が必要になる方の条件は、年収2,000万円以上の方と、給与所得や退職所得以外で年間で20万円以上の収入を得ている方が対象です。個人事業主はもちろんのこと、副業で会社勤めしている方も当てはまります。

確定申告を初めておこなう時は、訳がわからないかもしれません。そんな時は住んでいる管轄の税務署に聞くか、インターネットで調べてみましょう。現在はe-Taxというインターネット上で、手軽に申告できるシステムがありますので、こちらを活用するとスムーズにおこなえます。地方で申告会場があり、会場で直接教えてもらいながら申告することも可能です。どちらがいいか、自身で判断して確定申告をおこないましょう。

毎月決まった収入が保証されない

会社員とは違い個人で事業をおこなうため、毎月安定した収入は保証されません。その代わり、自身ががんばった分だけ収入に直結するため、会社員よりも大きく稼げることもあります。特に事業を開始した当初は、不安定な状態が続くため不安になるかも知れません。ですが、徐々に収入を安定させるための努力をし、仕組みを作っていけば大きく稼ぎながらも安定させることも可能です。不安定ではありますが、頑張りが素直に現れる部分にやりがいを感じる方は、個人事業主としてスタートを切ってもいいでしょう。

社会的信用は法人より低い

一般的には法人よりも、個人事業主の方が社会的信用が低くなりがちです。法人は株式会社などで登記をすることで、法人番号も発行され社会的信用が増します。個人事業主は、開業したからと言って法人番号のようなものもなく、個人で事業をおこなっているため、どうしても信用度は低めです。ですが、これはしっかり事業をおこなっていれば、大きな問題ではありません。個人事業主でも、信用を勝ち取って事業をおこなっている方は大勢います。逆に法人でも、詐欺会社のように信用できない会社もあります。個人か法人かは、あくまで1つの判断に過ぎず、自身で信用を勝ち取っていくことが大切です。

社会保険は自分で加入し負担は増える

会社に属していれば「厚生年金」「健康保険」に加入することができますが、個人事業主は自ら「国民年金保険」「国民健康保険」へ加入する必要があります。大きな違いは負担割合です。通常、会社員であれば会社が半分負担してくれます。一方で個人事業主は、国民年金保険と国民健康保険は全て自身で負担することになります。さらに、会社員から個人事業主になれば、それまで扶養対象だった配偶者などの扶養が外れて、保険料の負担が増すことがあります。会社で社会保険に加入している場合、配偶者などの扶養対象がいれば金額が一定になったり、保険料が不要になったりします。その代わり、個人事業主は会社員よりも収入面で大きく稼げる可能性があるため、一長一短な面はあります。

会社員は会社にバレる可能性がある

今となっては働き方改革の影響もあり、副業が推奨されつつありますが、副業禁止の会社もあるでしょう。副業禁止の中で副業をして確定申告が必要になった場合、会社にバレるケースがあります。確定申告で「事業所得」で申告すると、会社に特別徴収税額通知書が送付されます。これは納付する税金が記載された通知書で「どんな内容の所得」か記載されている可能性があります。

さらに、住民税からもバレる可能性があります。住民税は前年度の収入から算出されますので、副業で収入が増えれば住民税も増加します。会社は「収入が増えていないのに住民税が増えているのはおかしい」と思われるきっかけになるかもしれません。副業禁止の会社であれば、そういった部分に目を光らせているはずです。こればかりは、どうしようもないので会社と交渉するなりして、解決策を探すのが得策です。

個人事業主の税金

個人事業主が払う税金は主に4種類あります。「所得税」「事業税」「住民税」「消費税」です。所得税と住民税は大体の方が払うことになりますが、事業税と消費税は一定収入以上の方が対象になります。事業税は、事業所得が控除前の金額で290万円以上あれば課税されます。消費税は、売上高が1,000万円を超えると翌々年に課税されます。2019年度に売上高が1,000万円を超えた場合は、2021年に消費税の支払い義務が発生します。上半期の売上高で1,000万円を超えた場合は、翌年の2020年に消費税の支払いが発生することも覚えておきましょう。

個人事業主は「白色申告」か「青色申告」か?

個人事業主は確定申告時に「白色申告」か「青色申告」が選択できます。白色申告は手続きや経費項目が簡易的ですが、控除額が38万円(2020年分以降は、所得2,400万円以下で控除額48万円となります)です。一方の青色申告は青色申告特別控除が適用されるため、最大65万円を控除することができます。節税面で言えば、個人事業主であれば青色申告がオススメです。ただし、すでに解説しているとおり、開業届を提出していないと青色申告ができませんので注意が必要です。

個人事業主への理解を深めて検討しよう

個人事業主への理解を深めて検討しよう

個人事業主は、法人設立よりも手軽で費用も抑えて事業を開始することができます。開業届は提出しなくくても罰則はありませんが、提出することで得られるメリットは多いです。いきなり株式会社などの法人を立ち上げる必要がなければ、個人事業主から始めるのもいいでしょう。事業が軌道にのれば、個人事業主から法人に切り替える「法人成り」もできます。個人事業主ならではのメリットも様々ありますので、ぜひ検討してみてください。

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