働き方改革とは?どんな目的や取り組みなの?アイデア例なども解説filter働き方改革とは?どんな目的や取り組みなの?アイデア例なども解説

働き方改革とは?どんな目的や取り組みなの?アイデア例なども解説

「様々な企業で働き方改革が進んでいるけど、具体的にはどんな改革なんだろう?」
「働き方改革によってどう変化しているのか知りたい」
こんな悩みを持つ方向けに、働き方改革についてまとめています。

当記事では、働き方改革の基本的な部分から、3つの取り組み、関連法案内容、メリット・デメリット、アイデア例を解説しています。
働き方改革によって、これまでの働き方が大きく変化し、より良い職場環境の構築に貢献しているので、参考にしてみてください。

働き方改革とは?目的は?

パソコンで入力作業をしている人

働き方改革とは、少子高齢化による「生産年齢人口(15~64歳までの労働できる人口)」の減少にともない、労働力確保のために「多様性のある働き方」を促進する目的で取り組んでいる改革です。
日本政府主導でおこなっており、2019年4月に厚生労働省から「働き方改革法案」が施行されました。
日本では出生率の低下にともない、今後も人口が減少していく傾向にあるため、2050年には日本の総人口が1億人を下回るとの予想があります。
さらに、世界的に見ても日本の労働生産性は、主要な先進国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・カナダ・イタリア)の中では最下位です。
そして、残業や休日出勤などが多かったこともあり、健康被害や過労死なども問題になりました。
こうした人口減少と労働力確保を補う目的で、働き方改革はスタートしたのです。

働き方改革3つの取り組み

働き方改革は具体的に、どんな課題を解消すべく取り組んでいるのか解説します。

長時間労働の解消

「日本人は働きすぎ」というイメージが世界的に見て定着していますが、これは実際のデータを見ると間違ってはいないでしょう。
2014年時点でのOECD加盟国の中で、男性の1日平均労働時間は375分と1位です。OECD平均(259分)から見ても約2時間ほど、長時間労働していることが分かります。
こうした現状や、残業の多さによる健康被害や過労死が社会問題にもなっていました。
ですが、近年では働き方改革の効果が出始めており、2020年の「国別労働時間ランキング(年間)」では、43カ国の中で日本は24位という結果です。
これは、短時間労働者の割合(2016年時点では5位)が全体的に増えてきたことによる改善だと言えます。

非正規と正社員の格差是正

正社員と非正規雇用との格差は、以前から問題になっていました。
正社員との格差は業務内容や責任の重さにもよるため、全てを同じ待遇にはできないものの、部分的にでも解消されるべきだという取り組みが始まっています。
例えば、アルバイト・パートであっても正社員と同様に交通費を支給したり、有給休暇を取得できるようにしたりです。
派遣社員に関しても、正社員と同じ業務内容であるにも関わらず、賃金などの待遇面が劣っているのを改善するという格差是正の取り組みが進んでいます。

労働人口不足の改善

すでに解説したとおり、日本では少子高齢化による「生産年齢人口(15~64歳までの労働できる人口)」の減少が進んでいます。
これは、今後も回復することがないという見通しであり、現状でいかに労働力を確保していくかが問題になっています。
そこで進められているのが「多様性のある働き方」の導入です。
これまでは「会社に出社して8時間労働し帰宅する、場合によっては残業する」といった、働き方が主流でした。
ですが、個々に抱えている問題や適正などから、働きたくても働けなかったり、魅力を感じないといった問題があります。
自由度の高いテレワークやフレックスタイム制などを取り入れることで、これらの働き方を魅力に感じる人材を、幅広く確保していけるということで進められています。

働き方改革関連法案の内容

働き方改革では、どんな関連法案があるのか見ていきましょう。

時間外労働の上限規則

夜に電気のついたオフィスビル

長時間労働を規制する目的で、労働基準法の36協定に定められており「時間外労働時間」に対して上限を定め、違反する場合は「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課せられました。
原則として、時間外労働時間は「月上限45時間、年上限360時間」となっています。例外として、特別な事情があれば「月上限100時間以内(休日出勤を含む)、年上限720時間以内」です。
さらに、月45時間という上限を引き上げられるのは1年で6ヶ月までとなっています。

長時間労働者への面接指導対象拡大

従業員の健康被害をより多く防ぐ目的で、労働安全衛生法において定められており「長時間労働者への面接指導対象」の条件が引き下げられ、違反する場合は罰則対象になりました。
従来の対象者は月100時間以上の時間外労働者が対象でしたが、月80時間まで引き下げています。
その他、研究開発業務従事者(月100時間以上)、高度プロフェッショナル制度対象者(定められた時間以上)は、医師の面接指導が必要です。
違反すれば同じく罰則対象になります。

労働条件の説明義務

雇用後の条件面に関するトラブル防止目的で、労働基準法において定められており「労働契約条件の明示」を義務化し、違反した場合は罰則の可能性があります。
労働契約条件の「賃金」「労働時間」「その他の労働条件」に関して、明示しなければいけません。

労働時間の客観的な把握義務

労働者のライフワークバランスを保つ目的で、労働安全衛生法において定められており「客観的な労働時間の把握」を、全ての労働者を対象に義務化しました。
具体的には「労働日ごとの始業・終業時間の確認と記録」「始業・終業時間を使用者、またはタイムカードなどの客観的な記録媒体で確認する」「自己申告の際は、適切な説明や実態調査をする」などです。

勤務間インターバル制度

労働者のライフワークバランスを保つ目的で、労働時間等設定改善法において定められており「勤務間インターバル制度」を推奨しています。
具体的には、終業時間から翌日の始業時間までには「一定間隔が必要」という制度です。
長時間労働による、労働者の健康被害を減らすことは企業が努力すべきことであるとしています。

年5日以上の有給休暇取得義務

有給休暇を取得する目的で、労働基準法において定められており「年10日以上の有給休暇がある労働者は1年以内に5日以上の休暇を取得」させることを義務化しました。
取得するタイミングは労働者との話し合いで決定します。

割増賃金率の引き上げ

長時間労働を減少させる目的で、労働基準法において定められており「月60時間以上の残業に対する割増賃金の引き上げ」が適応されます。
具体的には「大企業であれば50%、中小企業であれば2023年4月から50%(2021年現在は25%)」です。

同一労働・同一賃金

1ドル札

雇用形態による格差を減らす目的で、パートタイム労働法・労働契約法・当同社派遣法において定められており「雇用形態の待遇差」を禁止しています。
具体的には、賃金・ボーナス・福利厚生、教育研修などです。

フレックスタイム制の柔軟性拡大

柔軟な働き方を普及させる目的で、労働基準法で定められており「フレックスタイム制の精算期限上限の引き上げ」が延長されました。
3ヶ月平均で法定労働時間内で労働した場合には、割増賃金の支払いが不要です。
不足している期間内の時間を振り替えすることも可能になりました。
また、1ヶ月を超える清算期間のフレックスタイム制を導入する場合には、労働基準監督署への届け出が必要になっています。

高度プロフェッショナル制度

成果によって正当に評価する目的で、労働基準法で定められており「一定要件を満たす者を時間ではなく成果で評価する」という高度プロフェッショナル制度を作りました。
対象者は一定の年収要件(年収1075万円以上)を満たしており、高度な専門知識や技術を持ち、時間と成果の関連性がない業務に従事している労働者です。
4週を通じて4日以上・年間104日の休日を確保することや、労働時間・休憩・休日および深夜の割増賃金の規定を適用しない制度でもあります。

産業医・産業保健機能の強化

労働者の健康管理を強化する目的で、労働安全衛生法で定められており「労働者50名以上の事業所では産業医を専任し適切な環境づくり」をおこなう必要があります。
事業者は産業医に対して、労働者の健康管理等に必要な情報提供をしたり、産業医が労働者におこなった健康に関するアドバイスなどを衛生委員会に報告しなければいけません。
また、労働者に対する健康相談や健康情報の適切な取り扱いルールの推進もされています。

働き方改革のメリット

働き方改革には、様々なメリットがありますので解説します。

ワークライフバランスが実現する

長時間労働の是正や働きやすい多様性のある働き方を推奨しているため、仕事以外のプライベートや、育児・介護などに費やせる時間を確保しやすくなりました。
こうしたライフワークバランスの実現は、疲労やストレス緩和・モチベーションアップにつながり仕事の生産性アップに期待できます。

雇用形態による格差が減る

同じ仕事をしているのに「正規雇用と非正規雇用で待遇が違う」といった不満を解消することができます。
労働条件を雇用形態で分けるのではなく「同一労働・同一賃金」の考えで統一することで、離職率の改善やモチベーションアップにつながります。

生産性がアップする

多様性のある働き方は、集中力をアップさせたり、通勤ストレスを軽減させたり、個を活かした働き方を実現してくれます。
その結果、これまでよりも本業に対して能力を発揮できるようになり、生産性がアップしやすくなります。

人材確保や定着率がアップする

働き方改革によって職場環境が整えば、その環境に魅力に感じる人材を確保しやすくなります。
優秀な方の中にも、こういった多様性のある働き方や環境を望むため、優秀な人材の確保にも貢献してくれるでしょう。
さらに、育児や介護で働けない人材も確保していけるようになります。こうした働きやすい環境では定着率もアップします。

働き方改革のデメリット

働き方改革には、デメリットもありますので解説します。

給料が減る可能性がある

長時間労働を減らすことを推奨しているため、残業代が収入に大きく関わる職種では給料が減ってしまうでしょう。
ですが、その分は副業などに費やすことができます。会社に相談してみて、本業以外の収入源も模索してみてください。

より業務効率化が求められる

労働時間の短縮にともない、時間内に業務を終わらせる必要があるため、これまで以上に業務効率化が求められます。
慣れるまでは大変ですが、これまでの非効率な部分を洗い出すいい機会だと捉えて、業務効率化を進めましょう。
結果的に、生産性アップに貢献してくれます。

環境構築に時間とコストがかかる

テレワークやフレックスタイム制の導入など多様性のある働き方を実現するためには、環境を構築して定着させるまでに時間・労力・コストがかかります。
大変ではありますが、一度構築してしまえばノウハウとして蓄積することができ、今後も活用できるようになります。

働き方改革のアイデア例

働き方改革によって実現している、働き方のアイデア例を解説します。

フレックスタイム制

「決められた期間内」に「決められた労働時間」さえ働けば、始業・終業時間・出社の有無は自由という働き方です。
コアタイムと呼ばれる「必ず出社しなければいけない時間」を定めている企業もありますが、必須ではありません。
かなり自由度が高くなっており、生産性アップに期待できます。

テレワーク

主に自宅でPCなどのIT機器を活用して、業務をおこなう働き方です。
ウィズコロナで、その必要性が一気に認識されました。
遠方であってもWeb会議ツールなどでコミュニケーションが取れるため、通勤圏内以外でも仕事ができます。

サテライトオフィス

企業が遠方の社員の通勤負担を軽減させるために、本社から離れた場所に小規模なオフィスを構える取り組みです。
テレワーク同様に、Web会議ツールを活用すればコミュニケーションも取りやすく、社員の負担が減るため生産性アップに期待できます。

社内保育園

子育て世代の社員向けに、自社内に保育園を作ることで子連れでも安心して出勤できるようにする取り組みです。
子供を安心して預けられる保育園や、家族が近くにいないなどの人材に対する不安要素を取り除けます。

副業解禁

以前は「本業に支障が出る」という理由で、副業を禁止している企業は多い傾向にありました。
ですが、働き方改革で長時間労働が是正され、給料が減る職種に対する危惧もあり、副業を解禁する動きが増えてきました。
副業によっては、本業にも活用できる能力を身に付けられるといった理解も広まっています。

働き方改革でより良い職場環境を

ミーティングをしている3人の男性

働き方改革では「長時間労働の解消」「非正規と正社員の格差是正」「労働人口不足の改善」という、3つの軸に取り組む目的があります。
働き方改革関連法案も施行され始めた結果、世界的に見ても日本の労働時間改善は見られています。
さらに、ウィズコロナの影響により、より多様性のある働き方に対する認識も高まってきました。
メリットやデメリットを理解した上で、自社にとって「何が問題」で「どうプラスになるのか」を検討してみましょう。
当記事で、働き方改革について理解を深めて頂けて、お役に立てたのであれば幸いです。

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