フリーアドレスの実態は?失敗しないためのコツやメリットなど解説
「より自由な働き方としてフリーアドレスに興味がある。」
「具体的にはどんな方法で、どんな恩恵があるのか知りたい。」
こんな悩みを持つ方向けに、フリーアドレスについてまとめています。
当記事では、フリーアドレスの基本的な部分から、広まった背景、メリット・デメリット、向いている職種、導入方法、失敗しないためのコツまで解説します。
良し悪しのあるフリーアドレスですが、見極めた上で活用できればプラスになりますので、参考にしてみてください。
フリーアドレスとは?
フリーアドレスとは、「Free(自由)Address(住所)」という意味合いであり、特定の固定席が存在せず、業務内容や気分次第で自由に席を移動して仕事ができるオフィススタイルです。
「図書館のような環境」をイメージすると分かりやすいでしょう。
例えば「急遽、チームでの打ち合わせが必要になった」「気分転換に席を変えて仕事したい」「集中して仕事をしたいから静かな場所へ移動する」などに対応できる自由度の高さが特徴です。
フリーアドレスは、オフィスの一部に導入するパターンもあれば、部署全体で導入するパターンなど、オフィス規模や職種などの要素によって様々です。
フリーアドレスが導入された背景
フリーアドレスは、海外にも似たようなスタイルがあったものの、実は日本発祥です。
1987年に清水建設の技術研究所にて、世界で初めて導入されました。当初は、現在のように「自由な働き方」という目的ではありませんでした。
欧米に比べて1人あたりの作業スペースが狭かったため、不在者の席も自由に使用できるように「仕方なく」導入されたものだったのです。
その後、研究が続けられた結果、1994年にIBMビジネスコンサルティングサービスが、明豊ファシリティワークスとの協力により、本格的なフリーアドレスオフィスの成功事例として注目を浴びました。
そして、現在ではオフィススペースの有効活用方法としてはもちろん、より柔軟な働き方ができるようにと目的がシフトしています。
フリーアドレスの実態
株式会社アスマークがWEBアンケートで調査した結果(有効回答数800)によれば、下記のような結果が得られています。
- フリーアドレスを認知している割合は8割、実際にフリーアドレスで仕事をしている割合は2割程度
- 効果として感じられるのは「モチベーションアップ」「気分転換になる」「コミュニケーションの活性化」など
- 課題として感じられるのは「自分の席がないと不便」「席を替わったり選ぶのが面倒」「落ち着かない」など
参考:フリーアドレス経験者は2割、実感したメリット・デメリットとは?「フリーアドレス意識調査」
これらは一部のアンケート結果ではありますが、フリーアドレスの実態は「認知されてはいるが、まだまだ導入する企業が少ない」事が分かります。
効果や課題も様々であり、導入に適しているかどうかは、職種や事業内容次第です。
フリーアドレスのメリット
フリーアドレスには、様々なメリットがありますので解説します。
コミュニケーションの活性化
席がオープンで自由に移動しながら仕事ができますので、固定席では関わりづらい他部署などの社員との交流が用意におこなえます。
業務中にもコミュニケーションが発生しやすい環境であるため、リアルタイムでの情報共有やアドバイスなどがおこなえるのは魅力的です。
Web会議ツールも便利ですが、リアルでやり取りすることで得られるものもあります。
コミュニケーションが活性化することで、自身や自身の部署だけでは思いつかないような「アイデア」が生まれる可能性があります。
オフィスを有効活用できる
外回りなどで席を外している場合、その席を自由に使用できるため効率よくオフィスを活用できます。
固定席の場合は、社員数分の席を確保する必要がありました。例えば「営業で外回りしている社員」「テレワークしている社員」など、状況次第で空席になってしまうことがあります。
フリーアドレスであれば、空席になったとしても他の社員が気兼ねなく使用することができるため、状況に応じて効率よくオフィスを有効活用することができます。
整理整頓がしやすい
柔軟に移動できるのが最大のメリットです。
必要最低限のものしか持ってあることができないため、デスク上は常に整理整頓しやすくなります。
固定席であれば、自身の仕事ツールや資料などを置いていても、誰かに迷惑をかけることは少ないでしょう。
ですが、自由に移動できるのがフリーアドレスですから、自分の持ち物を必要最低限に抑える必要があります。
普段から整理整頓が苦手な方にとっては、こうした環境下で仕事をすることで、整理整頓する癖が付くようになるかもしれません。
ペーパーレス化が促進できる
フリーアドレスでは、頻繁に使用者が入れ替わるのと、引き出しなどの保管スペースがないため紙資料を保管することができません。
解消する方法として、紙資料をデータ化する「ペーパーレス化」を進めるといいでしょう。
ITが発達した現在では、契約書や請求書、その他の紙資料などを簡単にデータ化することができます。
ペーパーレス化することで、保管スペースや管理コストの削減、資料をすぐに探しやすくなるなどのメリットがあります。
フリーアドレスを推進することは、こうしたペーパーレス化など業務効率アップを促進させる効果もあります。
フリーアドレスのデメリット
フリーアドレスには、デメリットもありますので解説します。
人によっては集中できない
フリーアドレスは、仕切りが一切なく社員が頻繁に入れ替わったり、コミュニケーションが活発になりやすいため、人によっては集中できない場合があります。
集中できなくなってしまえば、逆に作業効率が落ちてしまうでしょう。
ですから、部分的にでも集中できるように簡易的なパーテーションを導入したり、少し離れた位置にもデスクを配置するなど集中できる環境づくりも重要です。
あとは、利用対象者の適正を事前に把握しておき、無理に利用させることは避けたほうが無難です。
マネジメントが難しくなる
自由に席を移動できるため「誰が」「どこで」「何をしているか」が把握しづらくなります。
規模による部分はありますが、オフィスが広いと状況把握に時間がかかってしまい、社員のマネジメントが難しくなる可能性があります。
ですから、どこにいても常に状況把握ができるようにスケジュールを共有したり、連絡が取れるようにITツールを活用しましょう。
業務効率が低下することもある
固定席は自身の仕事しやすいように整っているのと、同じ部署の特定の人物を探す場合も固定席であれば、すぐに見つけることが可能です。
ですが、使い勝手のいいように自身の物などが置けないフリーアドレスでは作業効率が悪くなる可能性があります。
ペーパーレス化が進んでいない環境では、特に使いづらさを感じるでしょう。
特定の人物も探しづらくなります。
ですが、フリーアドレスが導入されるのをきっかけに、ペーパーレス化を進めたりITツールの導入などを検討することで、より良い環境を作れるでしょう。
そうなれば、以前よりも業務効率がアップすることも十分にありえます。
コストと時間がかかる
実際に導入しようとしても、導入経験のない企業であれば導入までに時間も労力もかかります。
慣れない状態で導入した後も、定着するまでに時間が必要になるでしょう。
そして、フリーアドレス用のデスクなどの備品購入や、改装、レイアウトなどの環境構築を専門家に依頼する場合にはコストがかかります。
コストをかけても効果が出る保証がないため、いきなりの大規模導入はリスクがあると言えるでしょう。
ですから、事前に目的や枠組みを作っておき、トライアルなどで様子見することをオススメします。
フリーアドレスに適している企業
フリーアドレスは、全ての企業に適しているわけではありません。適している企業は「IT」「総合商社」「メーカー」「スタートアップ・ベンチャー」など、クリエイティブな環境が必要な企業が挙げられます。
逆に適していない企業は「ペーパーレス化の必要がない」「事務的な仕事がメイン」など、現状維持や固定席が適している企業です。
フリーアドレスの導入方法
フリーアドレスの導入方法について解説します。
1.目的設定と枠組み構築
フリーアドレスを導入するにあたって「どのような目的で導入するのか」を明確にしましょう。
まずは社内の現状を把握して、どんな問題点があるのかを調査します。もっとクリエイティブなアイデアを生み出したいのに生まれない場合は、コミュニケーション強化目的として導入できます。
限られたオフィススペースの中で、在席率に応じてスペースを有効活用したい場合にも導入できます。
特に、フレックスタイム制やテレワークなどを導入している企業であれば、より効果的にスペースの有効活用が実現するでしょう。
目的を設定したら、実施するにあたって「規模」「レイアウト」「対象者」「ルール」などを決めて、フリーアドレス導入に必要な枠組みを作りましょう。
ここでは、実際に対象者候補となる社員にも参加してもらい、現場の意見を取り入れることが肝心です。
思い込みだけで導入しても、導入後に使いづらい環境になってしまうことがあります。
導入後の日常的なレベルまで想定した枠組みを作っていきましょう。
2.トライアル実施
目的設定と枠組みを作ったら、実際にトライアルをしてみましょう。
トライアルの目的は、導入前にテストすることで事前に作った「枠組み」とのギャップを埋めていくためです。
特に、大規模導入を検討している際には、必ずおこなっておくべきです。
運用してみて分かるメリット・デメリットは、とても大事なデータになります。
実際に導入してみて、デメリット部分が解決できないようであれば、導入を控えるか新たな解決策を考える判断材料になります。
本格的に導入するにしても、現場の意見や実際のデータがあれば、より効果を発揮しやすくなるため、不安材料を取り除く意味でもトライアルをおこないましょう。
3.導入開始
トライアルで実際のデータが取れて、問題がなければ本格的に導入しましょう。
事前にトライアルを実施することで、導入前の不安は解消されているはずです。
部分的に導入する場合であれば、トライアルの時点である程度のデータが取れるので、この時点でも問題は少ないでしょう。
ですが、トライアルでは大規模導入を想定していないため、部署やフロア全体をフリーアドレスにする場合は、一気に拡大せず徐々に導入します。
拡大する中で、新たに発見する問題点も見つかる可能性があり、それらを改善しながら進めるほうが確実です。
4.導入後の分析と改善
導入後は、分析と改善が必須です。
実際に本格的に導入され始めてから分かることは多いでしょう。
大体の問題は解消されているかもしれませんが、細かい部分で気になることが出てくるものです。
例えば、ウィズコロナでは自分が使用した後、簡単な除菌ができるように、デスクに除菌シートなどを用意しておくといったことです。
その他、定期的に使用者からの意見を気軽に取り入れられるよう、意見箱を設置するなどして分析と改善を繰り返すことが大切です。
フリーアドレス導入で失敗しないためのコツ
フリーアドレス導入の際に、失敗しないように意識するコツを解説します。
合う人合わない人の環境づくり
全ての社員にフリーアドレスが適しているわけではありません。
枠組みの時点で対象者や部署を慎重に選定する方法もありますが、各社員の適正に合わせた環境づくりも大切です。
「大きなデスクを置くだけではなく、小さな少人数用のデスクも用意する」「簡易的なパーテーションを使えるようにする」などです。
さらに、フリーアドレスは、席の入れ替わりが多いため必要最低限の私物しか置けません。
人によってはそれが非効率だと思う人もいるでしょう。
ですから、近くに私物を入れられるロッカーを設置するなど、少しでもデメリットの部分を解消できる環境づくりを心がけましょう。
効率よく運用するルールづくり
導入後に見えてくるデメリットは大小あります。
例えば、特定の席に特定の社員が固まるなんてことはよくある話です。
その場合は、全体的なコミュニケーションの活性化やアイデア創出が目的の場合、あまりよい環境とは言えないでしょう。
様々な席を利用してもらうための、ルールづくりも意識するといいでしょう。
フリーアドレスを有効活用しよう
フリーアドレスは、固定席がなく自由に移動して仕事ができるオフィススタイルです。
新たなオフィススペースの有効活用や、新たな働き方として広まりつつあります。
コミュニケーションの活性化や整理整頓しやすいなどのメリットがある一方、集中できなかったり業務効率が低下する可能性というデメリットもあることを理解しておきましょう。
導入目的をはっきりさせ、自社にフリーアドレスが必要なのかを判断して、必要であればトライアルから徐々に導入していくのがオススメです。
当記事で、フリーアドレスについて理解を深めて頂き、有効活用の手助けになれば幸いです。