時差出勤はコロナ禍で効果や意味がない?メリットや課題などを解説!filter時差出勤はコロナ禍で効果や意味がない?メリットや課題などを解説!

時差出勤はコロナ禍で効果や意味がない?メリットや課題などを解説!

当記事では、時差出勤の基本的な部分から、フレックスタイム制との違い、メリット・デメリット、導入に関する準備、導入のポイントを解説しています。時差出勤はコロナ禍において、多様性のある働き方として多くの企業がメリットを感じ導入していますので、参考にしてみてください。

時差出勤とは?

時差出勤とは?

時差出勤は、社員の通勤負担を軽減するために導入されている制度です。通常は「8時~17時」「9時~18時」という勤務時間が多いため、この時間に合わせて車や電車で通勤する方がほとんどです。そのため、渋滞や満員電車の状況が生まれます。そんな状況は心身ともに疲弊するため、本業にも影響を及ぼす場合があります。ですから、このような通勤時の負担を解消するために導入されています。時差というとおり、通常の出勤時間と退勤時間を前後に数時間ずらして勤務します。例えば「7時~16時」「10時~19時」のような複数のパターンが存在するため、日によって通常よりも早く出勤したり、遅く退勤することもあります。これは、人によってメリットにもなればデメリットにもなりますので、後ほど詳しく解説します。

時差出勤が広まった背景

上記でも解説した通り、時差出勤が導入される主な理由は「社員の通勤負担軽減」です。東京都の場合、通勤時間は片道平均で約40~50分ほどとなり、郊外からの出勤では片道数時間かけて通う方もいます。車通勤でも長時間運転は疲労しますが、満員電車で通勤する方はさらに大きな負担になるでしょう。パーソナルスペースがないうえに、座ることもできず立ちっぱなしであることが多く、心身ともに疲労が溜まります。本業へのモチベーションやパフォーマンス低下につながりますし、柔軟な働き方が広まっている時代だからこそ、普及してきた背景があります。

さらに、ウィズコロナになってからは「感染対策」としても有効ということで、新たに時差出勤を導入する企業が増えています。多くの方が似たような時間帯に出勤すれば、それだけ密状態になってしまい、感染リスクが高くなってしまうでしょう。社内で感染してクラスターになる可能性もあるため、できるだけ通勤時間が重ならないようにするのが効果的という理由もあります。

時差出勤とフレックスタイム制の違い

時差出勤とフレックスタイム制は、よく混同される制度です。どちらも時間的な要素があるため、似たような制度と勘違いしてしまう方がいます。ですが、どちらも明確に異なる部分が存在します。

時差出勤とフレックスタイム制の大きな違いは「時間的自由度」です。時差出勤は既存の勤務時間の出勤・退勤時間を前後に「ずらす」ことであり、基本的な勤務時間である「1日8時間」という部分は変わりません。フレックスタイム制では、事前に決められた月の総労働時間さえクリアすれば「1日の勤務時間は自由」です。コアタイムが導入されていれば、その時間は出社する義務がありますが、それでも最大6時間ほどが一般的です。
さらに、時差出勤とフレックスタイム制では、そもそもの導入目的が異なります。時差出勤は「通勤ラッシュを避けて通勤させるため」という目的であり、フレックスタイム制は「より自由で柔軟な働き方を定着させるため」という目的です。どちらも、導入することによるメリットでは似たような部分はありますが、根本的な導入目的は異なります。

時差出勤のメリット(効果)

時差出勤には様々なメリットがありますので、それぞれ解説します。

通勤負担を軽減しパフォーマンス維持につながる

そもそもの導入目的は「通勤ラッシュ時の負担軽減のため」であり、一般的に混雑しやすい通勤ラッシュ時の時間帯を避けて、通勤してもらおうという制度です。通勤ラッシュが避けられることは、心身ともに負担が大幅に軽減されます。大幅に軽減されることで、社員のモチベーションや、仕事に対するパフォーマンスを維持することができるでしょう。さらに、混雑するラッシュ時を避けて通勤することで、車であれば燃費向上による交通費削減、電車であれば座って本などをゆっくり読んで勉強する時間が生まれます。プラスで様々なメリットが発生するため、時差出勤による恩恵は大きいと言えます。

コロナ感染対策に効果的

ウィズコロナでは、密状態が一番の感染リスクとなります。特に、電車通勤者にとって通勤ラッシュ時の満員電車は、感染リスクが大きいでしょう。感染リスクが大きいということは、コロナウィルスが社内に持ち込まれる可能性も高くなり、クラスターが発生してしまう可能性もあります。そうした事態を避けるためには、時差出勤で大勢の方と出勤をかぶらせないようにすることです。1時間出勤時間をずらすだけでも、通勤時の負担軽減を体感することができるでしょう。「7時~16時」や「10時~19時」など、どの時間帯にずらすのが適切なのかを社内でよく話し合い、双方にメリットになるよう調整が必要です。

ワークライフバランスが向上する

ワークライフバランスが向上する

これまで決まった時間でしか勤務できなかったため「早めに出勤して、やりたいことをしよう」「明日は体調を整えたいから、少し遅めに出勤しよう」などの、選択肢を増やすことができます。固定された時間よりも、時差出勤のほうが自由度が高くなるため、社員のプライベートでの自由度も上がりやすくなります。自由度が上がれば、仕事での疲れやストレスから開放されやすくなるため、プライベートが充実するようになり、仕事に対するモチベーションアップが期待できます。

人材採用の幅が広がる

特定の理由によって働きづらい方は多いです。「家族の介護をしなければいけないため、通常の勤務時間では働きづらい」「子供のことで遅くまでは働けないから、早めに帰宅したい」といった方です。時差出勤を導入することで、こうした人材へのアピールにもつながります。中には優秀な社員だったものの、上記のような理由と時間の関係で退職したという方もいるでしょう。「働きたいけど働けない」といった、潜在的に仕事を求めている優秀な人材を採用するチャンスが生まれます。現状では、少子高齢化で生産年齢人口(15~64歳の生産活動を支えている年齢の人口)が減っており、回復の見込みがないことから人材採用の幅が広がることは強みになります。

時差出勤のデメリット(課題)

時差出勤にはデメリットもありますので、それぞれ解説します。

コミュニケーションが取りづらくなる

コミュニケーションが取りづらくなる

時差出勤は、すべての社員が対象となるわけではないため、通常勤務や同じく時差出勤をしている他部署との連携が取りづらくなるでしょう。緊急性の低い連絡事項ならまだいいのですが、緊急性が高く連絡が遅れることで業務に支障をきたすかもしれません。さらに、取引先などの社外の方との連絡に関しても、取りづらくなる恐れがあります。時差出勤が導入されることが分かり次第、コミュニケーション不足が発生しそうだと仮定し、周りへの周知とともに情報共有できる仕組みを考えておきましょう。例えば、社員同士や取引先など外部の方にも、出退勤がクラウド上で確認できるように共有するなどの対策が必要になるでしょう。

勤怠管理が複雑になる

これまでは、全ての社員が同一の勤務時間で勤務していたため、勤怠管理が比較的容易におこなうことができました。ですが、時差出勤を導入することで、対象となる社員と対象外の社員で出勤時間が異なるため、勤怠管理がこれまで以上に複雑になります。こうした複雑な勤怠管理をこなすためには、時差出勤に対応している勤怠管理システムを導入したり、時差出勤の手続きや手順などを可視化して共有しておくなど、スムーズな仕組みを構築しておくことが肝心です。導入後は、定着するまでに時間がかかり混乱する可能性もありますが、実施しながら改善点を修正していくことをおすすめします。

帰宅時間が遅くなる可能性がある

これは対象社員のデメリットになります。時差出勤は、いくつかのパターンを事前に決めることになります。その中で対象となる社員に対して、勤務時間を選択させて都合のいい時間に出勤してもらうことができます。ですが、業務の状況次第では「この日は遅い時間の出勤でお願い」など、自分の都合に合わない出勤をお願いされることもあるでしょう。そうなれば、通常よりも帰宅時間が遅くなってしまうことがあります。基本的に時差出勤は通勤ラッシュを避けて通勤させることが目的ですから、時には会社の都合で勤務しなければいけない事態が発生する可能性を考慮しておきましょう。

時差出勤はコロナ禍で意味がないのか

時差出勤に関して「意味がないのでは?」と疑問に思われる方がいるようです。理由としては「会社周辺の交通状況や始業時間、または業種によっては効果がない。意味がない。」という意見があります。確かに、導入しても通勤状況に対する負担や、生産性に影響がなければ意味がないかもしれません。さらに、サービス業などで営業時間が固定されている場合にも、導入する意味はないでしょう。ですから、自社の状況を事前によく把握し、社員からの聞き取りなどをしっかりおこない、導入してどれだけの効果が見込めるのかを判断しなければいけません。

ウィズコロナにおいての時差出勤は、意味がないわけではありません。メリットの部分でも解説しましたが、電車通勤の方にとっては感染リスクを下げられる可能性があります。たとえ30分でも時間がずれれば、地域や状況によっては通常よりもリスクが減るかもしれないからです。導入の際には、こうした通勤状況も事前に把握しておき、導入するか検討しましょう。

時差出勤は何時が理想?

肝心な時差出勤は何時に設定すべきなのか?という問題ですが、ゼンリンデータコムが分析した統計から解説します。首都圏全体の平均ですが、時間ごとのピーク率を見てみると「7時15分~8時30分」ではピーク率が80%を超えています。そして「6時~6時45分」「8時45分~10時」までのピーク率は約60%以下となっています。そして、東京都の通勤時間が片道平均で40~50分ほどであることを考慮し、時差出勤に適している出勤時間は「7時~7時30分」「9時45分~10時」ほどでしょう。これはあくまで、おおよそのデータですから一概には全ての企業に適しているわけではありせん、ですが、1つの参考にはなるでしょう。

時差出勤の導入準備

実際に時差出勤を導入する際に、必要な準備を解説します。

時差出勤対象社員の選定

パターンを決めたら「どんな条件の社員を対象とするか」を明確にします。業務上、その時間が必要だから対象とするのか、プライベートで子育てや介護などの事情でも対象とするのかを決めます。近年は柔軟な働き方が好まれる傾向にあるため、社員のワークライフバランスを考えた対象者を選定するのがいいでしょう。

勤務時間のパターンや回数の検討

時差出勤に採用する勤務時間のパターンや回数を検討します。これは自社の状況、社員の意見、通勤事情などを考慮し、複数のパターンを決めておきましょう。回数は特定の回数なのか、無制限なのかを決めます。対象社員がすでに決定しているはずなので、事前に決定したパターンを確認してもらいましょう。社員との意見をすり合わせて、最終的に導入しても問題ないか検討しましょう。

就業規則の改訂

決定事項を就業規則へ記載します。就業規則には必ず「始業時刻・終業時刻」を記載します。例文を記載しておきます。

【始業時刻・終業時刻】
当社が定める始業時刻・終業時刻は下記の通りとする。
終業時刻:8:00
終業時刻:17:00

【時差出勤】
対象社員からの申請があり、会社が認めた場合には、以下の勤務時間を利用することができる。
パターンA:始業時間 7:00 終業時刻 16:00
パターンB:始業時刻 10:00 終業時刻 19:00

社内への周知

時差出勤について導入する準備が整ったら、全社員へ周知をおこないます。しっかりおこなっておかないと、業務に支障をきたす可能性があるため、確実に周知をしていきます。さらに、社外の取引先などへの周知も忘れずにおこないましょう。

時差出勤導入のポイント

時差出勤を導入する際のポイントを解説します。

残業や深夜割増などの賃金を把握する

時差出勤では、出勤時間を遅くすることが可能ですが、実働8時間+休憩1時間の合計9時間の場合は注意が必要です。午後13時以降に設定すると、22時~5時までは深夜割増賃金として25%増しの支払いが発生します。ここに残業が加われば、50%という割増賃金になるため出勤時間の設定には注意しましょう。

一斉休憩の適用除外は労使協定を締結する

通常は、一斉休憩(6時間以上なら45分休憩、8時間以上なら60分の休憩)となります。ですが、時差出勤では一斉休憩ができない場合があります。この際には、労働局に「一斉適用の適用除外に関する労使協定書」を利用して、労働者と話し合って締結する必要があります。

時差出勤用の勤怠管理システムを導入する

対象者の出勤時間や退社時間がバラバラになるため、勤怠管理が複雑になります。自社で使用している従来の勤怠管理システムで、時差出勤に対応できない場合は、時差出勤に対応している勤怠管理システムを導入しましょう。コストはかかりますが、業務効率化につながるので検討する価値はあります。

時差出勤を有効活用して生産性をアップさせよう

時差出勤を有効活用して生産性をアップさせよう

時差出勤は、社員の通勤時の負担を軽減する目的で作られた制度です。対象社員が複数の勤務時間の中から自由に選択し勤務できます。ウィズコロナでは密を避けられますし、柔軟な働き方としても注目を集めており、導入企業も増えています。生産性アップなどのメリットがある一方で、勤怠管理が複雑になるなどのデメリットもあります。ですが、デメリットは対策次第で解決できるでしょう。導入時には対象社員へのヒアリングや、導入方法や周知を適切におこなうことで、恩恵を受けることができます。当記事で時差出勤への理解が深まり、導入のお役に立てれば幸いです。

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