ストックオプションのメリットや事例など解説!退職時はどうなる?filterストックオプションのメリットや事例など解説!退職時はどうなる?

ストックオプションのメリットや事例など解説!退職時はどうなる?

「ストックオプションって、どんな仕組みなんだろう?導入検討しているからポイントなどを知りたい」
「ストックオプションを導入している企業ってどうなんだろう?」
こんな悩みを持つ方向けに、ストックオプションについてまとめています。

当記事では、ストックオプションの基本から、仕組み、導入目的、種類、メリット・デメリット、活用ポイント、転職・退職時について、事例を解説しています。
ストックオプションを活用することで様々な恩恵が得られますので、ぜひ参考にしてみてください。

ストックオプションとは?

株式市場の様子

ストックオプションとは、企業が決定した「期間・数・価格」で株式上場前の株を手に入れることができる権利のことです。
一般的に株を購入する際は、JASDAQや東証などの株式取引所へ上場された後にしか購入できません。
ですが、企業がストックオプションを導入することによって、社員や役員は「上場前に上場後よりも安い価格」で手に入れることが可能になります。
上場された後は、株価が高騰する可能性が非常に高いため、安く手に入れた株を価格が上がった時点で売却すれば、大きな利益を得ることができます。

新株予約権との違い

ストックオプションは「新株予約権」の一種であり、どちらも決められた価格で購入できますが、大きな違いは「付与対象者」です。
ストックオプションは「社員や役員」などの会社関係者に「報酬」として付与されますが、新株予約権は外部の「投資家」に「資金調達」などで付与することが可能です。

ストックオプションの仕組み

ストックオプションが、どんな仕組みなのかを解説します。

1.新株予約権の発行・付与

まず「新株予約権」を発行する必要があります。
発行するには「権利行使価額」という1株あたりの価格を設定しなければいけません。
この価格は、新株予約権を社員・役員が付与された後、株価が上がったとしても「設定された期間内」であれば、権利行使価額のまま付与・購入することができます。
例えば「権利行使価額100円・5年間・100株」という条件のストックオプションを付与されたとしましょう。
設立から3年で上場した後、4年目に株価が2,000円に上昇しました。
この時、付与されてない方は2,000円でしか手に入れることができませんが、付与されている方は権利行使価額である100円のまま手に入れることができます。

2.新株予約権の行使

決められた期間内に保有している株価が上がったとしても、手に入れる際にストックオプションの権利を「行使」することで、権利行使価額で株を購入できます。
上記の例であれば、2,000円に上がった株でもストックオプションの権利を行使すれば、権利行使価額の100円で手に入るということです。
何らかの不祥事などにより5年間で株価が下がってしまった場合でも、ストックオプションの権利を行使して株を手に入れなければ、損失はありません。

3.株の売却

株価が上場などで上がってからでも、決められた期間内であれば「ストックオプションの権利を行使」することで、権利行使価額で手に入れられるため売却すれば利益が出ます。
100円で100株の株を手に入れた場合、10,000円の購入金額になります。
2,000円に上がった時は「2,000円×100株=200,000円」となり、売却益は190,000円です。
もちろん、株価の上昇を期待して売却を保有し続けることはできます。
利益を狙うのであれば、焦らず見極める必要もあるでしょう。

ストックオプションの種類

ストックオプションには、5つの種類があります。

税制適格ストックオプション(無償)

無償で付与されることに加え、権利行使時に「給与課税(最大約55%)」対象とならない税制優遇措置を受けられるのが「税制適格ストックオプション」です。
その代わり、ストックオプションを付与するための条件が厳しく、特定の方のみにしか付与されません。

税制非適格ストックオプション(無償)

無償で付与されますが、課税対象となるのが「非税制適格ストックオプション」です。
権利行使時の「給与課税」と売却時の「譲渡課税(最大約20%)」対象となる代わりに、付与するための条件がありませんので、付与対象者は広範囲に設定できます。

有償型ストックオプション

権利行使価額を支払うことによって付与されるのが「有償型ストックオプション」です。
有償で購入するため税務上は「金融商品」扱いとなり、課税対象は「譲渡課税」のみとなります。
無償とは違い、自身で自社の株を購入しているという意識が生まれるため、モチベーションアップにもつながりやすいです。

1円ストックオプション

権利行使価額を1円に設定したのが「1円ストックオプション」です。
1円で付与されるため、権利行使時の利益は、ほぼ株価と同等の利益を得ることが可能になります。
主に退職金代わりとして付与することが多く、その場合の課税は「退職金課税(約25%)」となります。

信託型ストックオプション

社員や役員に付与するストックオプションを、信託に預けるのが「信託型ストックオプション」です。
近年、新たに注目されています。満了まで預けておき、ストックオプションを社員や役員へポイントとして付与し、付与したポイント数に応じて割り振っていく形になります。

ストックオプションのメリット

ストックオプションには、いくつかメリットがありますので解説します。

モチベーションアップ

喜んでいる男性

ストックオプションを付与された場合、自社の株価が上昇した分だけ売却したときの利益が大きくなります。
「自社を大きくする」という目標もありますが、こうしたストックオプションでの大きな利益も加わることで、自社の業績を上げるために社員や役員は努力しようとします。
その結果、モチベーションアップにつながりやすいです。

低リスクで株が手に入る

ストックオプション付与の対象となる社員や役員は、特定の期間内であれば購入したとしても権利行使価額で購入することができます。
通常よりも、はるかに安く株を手に入れることができるため、株価が下がったとしても大きな損失を受けにくくなります。
さらに、株価が思いのほか下落した場合でも、ストックオプションの権利を行使しなければ、株を手に入れることがないためノーリスクの場合もあります。

人材確保のアピールになる

将来的に大きな資産になりうるストックオプションがあれば、それを魅力的に感じる人材にアピールできるでしょう。
さらに、株価が上昇するまでの期間は給与が低めであっても、大きなリターンを得られる可能性があるため、優秀な人材でも低コストで確保しやすくなります。

ストックオプションのデメリット

ストックオプションには、デメリットもありますので解説します。

人材流出の可能性がある

自社の業績が上がり株価が連動して大きく値上がりすれば、売却した際に大きな利益を得ることができます。
ストックオプションのメリットではあるものの、こうしたリターンが得られる状況まで株価が上昇し、権利を行使して株を手に入れ売却したあとに退職してしまう人材が出てくる可能性があります。
可能性は低いですが、一度に何億もの利益を得られる場合もあるため、より魅力的で居心地のよい職場環境を作っていくことが重要です。

株価下落によるモチベーション低下

会社の業績が低下してしまう可能性は0ではありません。
どんなに将来性があって期待される企業でも、確実に業績悪化しない保証はありません。
特に、ストックオプションを導入するスタートアップやベンチャーでは、業績が安定するまでに時間がかかることから、株価下落の可能性は十分に考えられます。
業績が上がれば株価も上がるため、モチベーションを低下させないように努力する必要があります。

不公平感が発生することもある

ストックオプション付与の基準を明確に定めておくことが肝心です。
明確に定めてない状態では、ストックオプション対象者と対象者以外の関係性が悪くなってしまう可能性があります。
対象者以外が対象者となる基準を見た時に、納得できるような基準を設ける必要があるでしょう。
勤続年数や営業成績など、誰が見ても分かりやすい数字で判断できる基準を設けるのがコツです。

ストックオプション活用ポイント

ストックオプションを活用する際のポイントを解説します。

導入にオススメなのはスタートアップ・ベンチャー

ストックオプションを活用するのにオススメな企業は、上場を目指しているスタートアップやベンチャー企業です。
ストックオプションの大きなメリットとして、付与されてから権利を行使した際の株価が上がっているほど、大きな利益を得ることができます。
ですから、大きな成長が期待できるスタートアップやベンチャー企業に導入はアピールポイントになります。
大きなリターンを期待できるだけに、優秀な人材を低コストで確保しやすいというメリットもあるため、ストックオプションを活用するといいでしょう。

VCからの資金調達を考えているなら発行数上限に注意する

ストックオプションを発行する際には、発行数の上限に注意しましょう。
一般的には発行済株式総数の10~15%が望ましいとされています。
会社法上は、特に上限が定められているわけではありませんが、VC(ベンチャーキャピタル)から資金調達をする場合は、上記の上限を意識することをオススメします。
というのも、発行上限を上げることにより、株式の希釈化が起こるためVC側が敬遠してしまう可能性があるからです。
ちなみに、商法上では1/10までとされていますが、「新事業創出促進法に基づく新事業分野開拓の実施に関する計画の認定を受けた事業者」には、1/3まで付与の拡大が認められています。

ストックオプションは退職時にどうなる?

基本的には、ストックオプションは退職時に失効することが多いです。
そもそも、ストックオプションというのは、社員や役員のインセンティブや退職金代わりに付与されます。
これは、モチベーションをアップさせることで、会社へ貢献してもらいたいという目的があるためです。
ですから、上場前に退職してしまう社員や役員は、会社への貢献度が低かったということになり、基準に満たない退職者にはストックオプションの権利行使を失効させることができます。
もちろん、基準を満たしている社員や役員が退職する際には、退職金代わりとして行使する権利が発生します。
退職時に権利を行使できるかは、企業それぞれ基準が異なりますので、確認しておくと良いでしょう。

ストックオプションの成功事例

ストックオプションの事例で有名なのが「株式会社メルカリ」です。
スタートアップとして2013年に創業して以来、わずか3年で評価額1,000億円突破させ、5年という短期間で上場を成し遂げた日の終値時点では、時価総額は約7,000億円を超える結果でした。
資金調達にしても、近年上場した企業の平均が約5億円ほどに対し、メルカリは5年で約180億円ということからも、いかに期待され破竹の勢いで成長を遂げたかが分かります。
上場時に付与されていたストックオプションは、有価証券報告書に記載されている株主35名(14名は従業員)であり、この中で最も少ない株数を保有している方でさえ、上場時の終値で計算すると約6億円を超える価値となっているとのことです。
細かい条件などを考慮していないものの、上場した瞬間に35名全員が6億円以上の資産を持つ億万長者となったわけです。
今では、従業員の約6割にストックオプションが付与されているとのことで、細かい条件などは抜きにすると、平均で3,000万円以上の価値になるようです。
まさに、成功事例と言えるでしょう。

ストックオプションには夢がある

「Dream」のオブジェ

ストックオプションは、新株予約権の一種であり、企業が設定した「l期間・数・価格」で株を手に入れられる権利のことです。
社員や役員のインセンティブや退職金代わりに付与され、モチベーションアップに貢献してくれます。
未上場のスタートアップやベンチャー企業などでストックオプションがあれば、上場で株価が上る前に「権利行使価額」で権利を行使すれば手に入れることができるため、将来的に大きなリターンを得られる可能性があります。
ただし、業績悪化により株価の下落や倒産する可能性もあるため、必ずしも利益を得られるわけではありません。
その他、付与される基準は企業によっても様々なので、しっかりと確認しておくといいでしょう。
メルカリのような成功事例は稀ですが、ストックオプションには夢があるのは確かです。
当記事で、ストックオプションについて理解を深めて頂けたのであれば幸いです。

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