法人の種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説!
「法人として起業を考えている。でも、法人について基本的な事や、種類や特徴など分からないことが多いから詳しく知りたい」
こんな悩みを持つ方向けに、法人の種類についてまとめています。
当記事では、法人の基本から、種類、それぞれの特徴やメリット・デメリット、選ぶ際の注意点などを解説しています。
起業する際に、法人の種類などを理解しておき、事業に適している法人を選択すれば成功しやすくなるので、ぜひ参考にしてみてください。
法人とは?
法人とは「個人同様に法的権利や義務が認められている組織」です。
法的権利で守られている部分もあれば、法的に負うべき義務や責任が発生します。
民法第33条によれば「法人は法律の規定によって成立し、公益や営利を目的とする法人の運営や管理などは法律によって定められる」というように記載されています。
法人は大別すると3種類
法人は大きく分けると「公法人」「営利法人(私法人)」「非営利法人(私法人)」の3つに分けることができます。
それぞれ簡単に解説します。
公法人
公法人とは「国家目的を遂行するために設立された法人」です。
広い意味では国も含まれますが、一般的には国以外の公共団体などが対象です。
民間の法人とは異なり、公権力の行使が認められています。
公法人には「公共組合・営造物法人・地方公共団体・独立行政法人」など、様々な種類があります。
営利法人(私法人)
営利法人とは「公権力を持たず、主に経済的利益を得るのが目的である法人」です。
一般的には「株式会社・合同会社・合名会社・合資会社」などの種類があります。
運営によって得た経済的利益は、株主などに分配します。
それぞれの種類の特徴やメリット・デメリットについては後述します。
非営利法人(私法人)
非営利法人とは「公権力を持たず、主に経済的利益を得るのが目的ではない法人」です。
一般的には「NPO法人・一般社団法人・一般財団法人」などの種類があります。
利益を追求するのではなく、運営によって得られた利益を組織の活動をより円滑にするために使われます。
それぞれの種類の特徴やメリット・デメリットについては後述します。
営利法人の種類・特徴・メリット・デメリット
営利法人は主に「株式会社・合同会社・合資会社・合名会社」の4つに分けられます。
それぞれの特徴と、メリット・デメリットを解説します。
株式会社の特徴
株式会社は、最もポピュラーで人気な法人です。
「株式」を発行することにより、それを購入してもらうことで資金を集めることができ、集めた資金を元に事業を運営します。
株式を購入した「株主」は出資者という立場であり、持株比率によって経営に関わることができます。
ただし、株主は会社の持ち主という立場であり、事業運営は株主に選任された経営者の仕事です。
持ち株比率が株主よりも多い経営者であれば、決定権と経営権を経営者が持ちます。
株主は、出資の見返りとして取得した株式の価値が上がれば差益を得られたり、保有することで配当金や株主優待などの特典が得られます。株主は、出資額以上の責任を問われない「有限責任」となります。
株式会社のメリット・デメリット
メリットは、社会的信用度が高く、将来的に多くの資金を集めやすいことです。
株式会社を設立し、株式上場することで知名度や信用度がグンと上がり、会社の成長に大きく貢献してくれます。
社会的信用度が高ければ、銀行からの融資も受けやすくなりますし、投資家からも資金調達しやすくなるでしょう。
デメリットは、設立コストが約20万円と高めであったり、持株比率によって権限の強弱がついてしまうことです。
経営者よりも株主のほうが持株比率が多ければ、会社の実質的な権限を持つことができるため、経営方針などに影響が出る可能性があります。
合同会社の特徴
合同会社は、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルに、2006年に施行された会社法で導入されたばかりの新しい会社形態です。
近年できたばかりのために聞き慣れない会社形態ではありますが、世界的大企業である「Google」「Apple」「Amazon」などの日本法人は合同会社となっています。
特徴は、株式という概念が存在せず、出資者である社員や経営者が経営の意思決定をおこなえる点です。
利益配分も自由に決めることができるなど、スピード感を求めるには最適と言えます。
出資者は、出資額以内の責任を負う「有限責任」となります。
合同会社のメリット・デメリット
メリットは、出資者である社員や経営者で決められるため、意思決定までのスピードが早いことです。
さらに、株式会社よりもシンプルな組織構造なので、経営に関することや利益配分などの自由度が高いことや、設立コストが6万円ほどと安いことも挙げられます。
決算を公表する義務も発生しません(状況により公告の義務発生)。
デメリットは、株式会社より信用度や認知度が低いことが挙げられます。
さらに、出資額の割合に関係なく平等に決定権を持っているため、意見がぶつかってしまったり、利益配分でトラブルになる可能性があるでしょう。
また、株式上場することができません。
合資会社の特徴
合資会社は、4つの会社形態の中で唯一、2人以上でなければ設立できないのが特徴です。
株式会社と合同会社では「有限責任」となっていますが、合資会社は「無限責任(負債を全て負担する責任)」「有限責任」を負う社員が、それぞれ1名以上いなければいけません。
資本金も必要なく、信用・労務・現物のみで設立することができます。
メリットやデメリットが新しくできた合同会社に似ており、現在では合資会社で設立するという需要が少なくなっています。
合資会社のメリット・デメリット
メリットは、設立コストが約10万円ほどと株式会社よりも安く、最低資本金なしで設立することができます。
さらに、合同会社同様に社員や経営者が出資し権限を持つため、意思決定のスピードが早いです。
出資比率に関係なく平等に権限を持てて、決算公告の義務がないことも挙げられます。
デメリットは、無限責任を負う立場になると負債を全て追う必要があることや、権限が平等ゆえに意見の衝突によるトラブルが発生する可能性があります。
株式会社よりも認知度や信用度が低く、現在では需要が少ないことも挙げれらるでしょう。
合名会社の特徴
合名会社は、最も認知度が低いと言っても過言ではなく、出資者全員が無限責任を負う特徴があります。
メリットやデメリットを考えると、わざわざ合名会社にする必要性が感じられないため、合名会社として法人化することは限りなく少ないです。
合名会社のメリット・デメリット
メリットは、合同会社同様に資本金が必要なく、設立が簡単におこなえます。
設立コストも約10万円と安めです。
意思決定のスピード感や、社内規定などの自由度が高いことも挙げられます。
決算公告の義務もなく、出資比率を気にすることなく権限を持てるのもメリットと言えるでしょう。
デメリットは、負債を抱えた時は出資者全員が無限責任を負うことや、権限が平等であるための衝突も考えられます。
法人というよりは、個人事業主に近い性質であることから、選択する必要性は低いでしょう。
士業法人もある
上記の4つ以外にも、弁護士や税理士などの士業を生業とするのが「士業法人」です。
士業法によって定められた業務を組織で独占的におこない、営利目的のために運営されているため営利法人の一種になります。
非営利法人の種類・特徴・メリット・デメリット
非営利法人は主に「NPO法人・一般社団法人・一般財団法人」の3つに分けられます。
それぞれの特徴と、メリット・デメリットを解説します。
NPO法人の特徴
NPO法人は、社会問題に対する支援や解決を目的とした法人です。
活動内容は、内閣府が次の20種類に定めています。
- 保健、医療、福祉の増進
- 教育の推進
- 観光の振興
- まちづくりの活性化
- 農山漁村、中山間地域の振興
- 学術、文化、芸術、スポーツの振興
- 環境保全
- 災害救援活動
- 地域安全
- 人権擁護、平和推進
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の促進
- 子供の健全な育成
- 情報化社会の発展
- 科学技術の振興
- 経済活動の活性化
- 職業能力開発、雇用機会の拡大支援
- 消費者の保護
- NPO団体への助言や援助
- 1~19の分野と目的で都道府県、指定された都市の条例で定める活動
設立するには、役員(3人以上かつ監事が1人以上必要)を含め、最低でも10人以上の社員が必要です。
資本金は必要ないものの、設立に関しては認証を受けることが必須なため、設立までのハードルは高めです。
NPO法人のメリット・デメリット
メリットは、認知度や信頼度が高い形態であり、公共事業への参加が容易になったり、国や地方公共団体、公的金融機関などからの支援(補助金や助成金など)を受けやすいため資金調達しやすいことが挙げられます。
デメリットは、設立までに最低でも4ヶ月必要ななことや、何かしらの変更や活動をする際に、総会や理事会などの合意が必要なことからスピード感がなく手間が発生します。
一般社団法人の特徴
一般社団法人は、NPO法人同様に営利目的がメインではありません。
利益を出すこと自体は認められており、それを出資者などに配分することができない仕組みです。
得た利益は活動のために使います。
NPO法人よりも設立が簡単であり、最低でも2人(通常は理事1名、社員2名ですが、社員が理事を兼任することも可能)が必要です。
NPO法人のように活動分野が限定されていないのも特徴です。
一般社団法人のメリット・デメリット
メリットは、NPOのように分野による活動制限がないことや、医療や福祉分野では税制上の恩恵が受けられることが挙げられます。
さらに、資本金を必要とせず、登記手続きだけで設立できることから設立の手間や費用、時間も少ないです。
デメリットは、NPO法人と比べれば、国や地方やなどからの支援が少ないことが挙げられます。
活動が制限されていないため、収益を上げる活動がしやすいこともあり、支援が少ないのは当然と言えます。
一般財団法人の特徴
一般財団法人は、「財産」を元に営利目的以外で活動する法人です。
設立も容易におこなえ、財産合計が300万円以上あれば誰でも設立可能となります。
一般社団法人同様に活動内容に制限がなく、設立には財産を拠出できれば1名(役員との兼任OK)で可能です。
ただし、特定の条件を満たさなければ解散することになるという特徴があります。
一般財団法人のメリット・デメリット
メリットは、活動制限がなく自由に事業をおこなえることや、許可制ではないため設立までのスピードが早く、事業報告義務も発生しません。
さらに、税制上の優遇を受けられたり、法人名義での口座開設や財産所有も可能です。
デメリットは、300万円以上の物やお金などの財産が必要なことや、2期連続で財産が300万円未満になった場合は解散しなければいけません。
さらに、理事3名・評議員3名・監事1名の合計7名が必要です。
法人の種類を選ぶ時の注意点
法人の種類を選ぶ際には、どんな点に注意すべきなのかを解説します。
目的に合った法人を選択する
当然のことですが、事業目的によって種類を選定するのが重要です。
株式公開して広く資金調達したいのであれば株式会社を選択すべきですし、非営利でも社会問題解決に取り組みたいのであればNPO法人を選択すべきです。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、どの法人にするのかを検討しましょう。
融資は有限責任が無効になる
株式会社や合同会社では、有限責任があります。
出資額以上の責任を追わなくてもいいというものですが、銀行などからの融資には有限責任が無効になります。
法人として融資してもらう場合、経営者が連帯保証人になる場合が多いです。
負債を抱えてしまった場合に、融資額が返済できなくなれば連帯保証人である経営者には、融資額の返済義務が発生します。
全てが有限ではないことを理解しておきましょう。
途中変更できない法人格がある
営利法人は法人の種類を、他の営利法人へ変更することが可能です。
ですが、非営利法人は法人の種類を営利法人や、他の非営利法人へ途中変更することはできません。
組織変更の可能性を考慮するのであれば、種類は慎重に検討する必要があります。
法人の種類を理解して適切に選択しよう
法人の種類は大きく分けて「公法人・営利法人(私法人)・非営利法人(私法人)」があります。
その中でも営利法人は主に「株式会社・合同会社・合資会社・合名会社」の4つあり、非営利法人は主に「NPO法人・一般社団法人・一般財団法人」の3つに分けられます。
それぞれに特徴があり、メリット・デメリットが同じ部分もあれば、違う部分もあります。事業内容や目的によって、どの法人の種類が適切かを見極めて、注意点を考慮しながら選択していきましょう。